Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。

尿酸が高いとボケにくい!

尿酸が高いと痛風になる!というイメージが強く、なんとなく悪者扱いされてしまっています。

検診で尿酸が高いといわれ、なんの疑問もなしに薬を飲んでしまっている人は珍しくありません。

日本の「高尿酸血症・痛風診療ガイドライン」では「無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8.0mg/dL以上を一応の目安とする」との記載があり、私自身も、10年ほど前までは、「尿酸が高い→薬で下げる」治療に疑いを持っていませんでした。

たしかに、多くの観察研究で、痛風患者は高血圧、腎臓病、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などといった心血管リスクの合併が多いことが示されていますが、痛風によってこれらの病気が起こっているとはいえません。

おそらく、こういった病気になるような生活習慣が尿酸を上げ、痛風を合併しやすいという関係だと思われます。

 

さて、高尿酸血症は、どうしても治療しなければならない病気なのでしょうか?

実は、「高尿酸血症」という病名は日本にしか存在しません。

世界的には、痛風の症状が無いのに、検査データだけ見て薬で治療することに議論があり、アメリカのガイドラインでは、無症候性高尿酸血症の治療を推奨していません。

 

実は、ガイドラインでも、薬物治療は「考慮する」という表現で、積極的ではありません。

目安とか、考慮するとか言う表現は、霞が関文学ですかね。

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0025

 

いっぽう、2016年のランセットなどで、痛風がパーキンソン病やアルツハイマー型認知症、血管性/非血管性認知症の減少に関連すると報告されています。

尿酸が高いほうが、認知症になりにくいのです。

逆に、認知症がある人には、低尿酸血症が多いという事実もあります。

実は尿酸は強力な抗酸化物質で、その抗酸化力により、脳神経を保護しているものと考えられます。

活性酸素などによる酸化ストレスは、老化、特に動脈硬化との関連があることがわかっています。酸化ストレスを抑えることは、老化を遅らせることにつながるとも考えられます。実際、他の哺乳類と比べ、人間の寿命はかなり長くなっています。

こういったことを考慮すると、尿酸は、痛風を起こさない限りは人体に有益な分子です。

むしろ、とても重要な抗老化物質である可能性があります。

 

高尿酸血症の治療によく使われるアロプリノール(ザイロリックなど)は、他の薬と比べても、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)などの副作用が発生しやすいことがわかっています。症状もないのに致命的なリスクを取るのは、割に合わないように思います。ですので、現在の私は、血清尿酸値8.0mg/dL以上だからという理由で薬を出したりはしません。

尿酸が上がっているときは、その必要があって増えているわけですので、その原因を考えてゆくほうが、治療としてはより本質的です。

生命活動に組み込まれている成分に、善玉も悪玉もありません。

すべての物質、経路に意味があるはずです。

もっと言えば、その有益な部分も、人間が勝手に良いと思い込んでいるだけで、実は未知の有害な効果があるかもしれません。

 

肥満も、必ずその原因があるわけで、それを取り除いてゆく必要があります。

やみくもに食事を制限して体重を減らそうとしても、うまくゆかないのは当然です。

 

生命について、人間が理解している部分など、ほんの僅かです。

おそらく、人類は、自分の体のことを、まだ1%すら理解できていません。

私自身、その中にいますが、その狭い理解の範囲で、善悪を論じること自体が傲慢で、意味のないことなのかもしれません。

 

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重藤誠 by
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。
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