ここ十数年のわたしの人生は、GLP-1に一点集中しています。
リスク管理の観点からは、ちょっとあり得ない選択ですが、GLP-1の将来性に自信はありました。
GLP-1のおかげで、オックスフォード大学で仕事ができ、家族を得ました。
その流れから、恩返しの意味も含め、日本でもGLP-1を使った肥満治療をはじめる決断をしました。
こうして、当院は、2016年にGLP-1ダイエットに特化したクリニックとしてスタートしました。
当時は全く知られていなかった治療なので、様々な面で本当に苦労しました。
糖尿病専門医で、普通に使っていた薬であったにもかかわらず、糖尿病治療と肥満治療では指導のポイントの違いがあり、自分の未熟さを思い知らされました。
関連する論文を読みまくって、知識は万全にしていたつもりですが、それでも医療に万全はありません。
保険診療をやっているとあまり感じなかった、「値段に見合ったサービスを提供できているのか?」という重圧もあります。
強みを最大限、活かしたつもりですが、それでも難しいのが医療です。
さんざん本を読んで挑んだものの、経営面でもド素人で、今なら絶対にやらないようなことを、なんとなくやっていました。
いろいろ試行錯誤を繰り返した結果、翌年からは、継続可能なレベルに成長できましたが、まだ安定とは言えない状況でした。ある程度、覚悟していましたが、精神的に辛かったです。
専門医を活かして保険診療もはじめようかと、真剣に考えていた頃、GLP-1治療がテレビで紹介されました。
翌日から予約が殺到し、そのあとは、無我夢中で診療を続け、今に至ります。
当院が、爆発的に成長した瞬間でした。
文句も言わずに、突然の激務をこなし、休日出勤までして働いてくれた職員には、本当に感謝しています。
予想していたことですが、当院の成功を見て、美容外科や皮膚科のクリニックが次々に真似をするようになりました。ただ、出たり消えたりしているらしいので、あまりうまくいっていないのでしょう。
流れに任せていたら、大学で研究をするか、総合病院で働くかの医師人生だったはずです。
有名病院での勤務経験や、オックスフォードで一流誌に論文(GLP-1の作用機序の概念を覆す内容)を書いたアドバンテージもあり、安定はしていたかもしれません。
あえて安定を捨てて挑んだこの3年間は、ジェットコースターのようでした。
しかし、それゆえ、人間的にも大きく成長できました。
自分の選んだ道に後悔はありません。
この決断で、GLP-1ダイエットが、日本に広まるのを、少なくとも数年は早めることができたと思っています。
大きく伸びたとはいえ、日本でのGLP-1治療は、まだまだ芽が出たばかりといったところです。
現在も、新しい知見のリサーチと、治療効果を最適化するための微調整を繰り返す日々です。
引き続き、気を引き締めて、治療を続けていきたいです。