Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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牛乳は体に良いのか悪いのか

 

みなさんは、牛乳にどういうイメージを持っているでしょうか。

一般的には、「骨が丈夫になりそう」、「健康や体のために飲んでいる」といった、健康的なイメージが強いかもしれません。

いっぽうで、牛乳は体に悪い!という説も、出てきて久しいです。

世界的子育てバイブルの著者であるスポック博士は、「牛乳はカルシウムが豊富な良い飲み物である」と著書に書いていました。しかし、1998年以降、「最悪の食品は牛乳・乳製品である」としています。

「病気にならない生き方」シリーズで有名な新谷弘実さんは、「牛乳を摂る人は腸相が悪い」として、牛乳は体に悪いと言い切っています。

東洋医学系の食事でも避けられる傾向にあります。

 

科学的にはどちらが正しいのでしょうか?

2020年のニューイングランドジャーナルオブメディスン(NEJM)に、牛乳と健康についての総説があったので、読んでみました。NEJM、Feb.13, 2020

ハーバード大学の公衆衛生学の先生が書いたもので、信頼性は大変高いといえます。

それによると、

牛乳を成長期にとると身長が伸びる

カルシウム摂取は骨塩量、大腿骨近位部骨折を改善しない

血圧、体重への影響はよくわからない(ヨーグルトは減らす可能性がある)

死亡率が上がるという報告がある(ヨーグルト、チーズでは関係がない)

乳児の最大4%が乳タンパクにアレルギーを示し、豆乳への変更で改善。

成長期に一日コップ 1 杯摂るごとに、将来の大腿骨近位部骨折 9%増加

牛乳摂取は前立腺癌、子宮内膜癌と相関

 

→先進国で1日3杯以上の牛乳を飲むのは推奨されない

 

ということでした。

良いところもあれば、悪いところもあります。

 

 

思春期に牛乳をたくさん飲むことで、身長が伸びます。

確かに、乳製品を多量に消費するヨーロッパのProfessor達はものすごく高身長でした。

男性の平均身長が180㎝超えており、普通に身長2m前後の人がいます。

 

牛乳にはカルシウムのほか、インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor 1:IGF-1)などの成長因子も含まれています。

組織を大きくするのには有利になりますが、細胞の増殖を促す作用があるので、一部の癌が増えるのは必然といえます。

また、身長が高いと、体の細胞数は多くなります。

数が多いと、エラーが出る確率が上がるわけで、癌細胞の発生確率が高くなります。

身長が高いということは、体重も大きくなるため、転んだ時に骨にかかる力は大きくなります。

骨の強度が同じだったとしても、高身長のほうが骨折する可能性は高くなります。

心臓などの臓器にかかる負担も大きくなるため、高身長だと死亡率が高くなることがわかっています。

14万人の女性を対象にした研究では、身長が10センチ高くなるごとに、癌の発症率が13%上がることがわかっています。

前立腺癌、子宮癌については、成人になってからの摂取量でみているので、IGF-1などの成長因子が影響している可能性があります。

これについては、まだ詳しいことは不明です。

いずれにしても、

思春期に牛乳をたくさん飲む→身長が伸びる→高身長に伴うリスクが増える

ことは確かです。

高身長のほうが社会的に成功しやすく、収入も高いというデータがありますので、どちらが良いともいえません。

収入が低いと死亡率が3倍になるとも言われていますので・・・。

 

大人になってから、いくらカルシウムを摂っても骨が強くならないのは、前回書いた通りです。

 

急激にカルシウムの吸収量が増えると、副甲状腺や腎臓は、血液中のカルシウムを減らそうとします。

特に、腎臓からは、排泄されるカルシウムが増えます。

カルシウムが入るのは一瞬ですが、カルシウム排泄モードに入った腎臓は、なかなか切り替えができません。

長期的にはむしろ、カルシウムが流出してしまうことも考えられます。

サプリメントの種類や使い方、その人の腎機能によっては、骨粗しょう症を促進してしまう可能性もあるわけです。

 

まとめると、

牛乳は、成長期に飲むと体を大きくする

大人になってから飲む意味はあまりないかも

というかんじでしょうか。

 

私は以前より、「健康に良いと思って飲んでいるのなら、やめたほうがよいですよ。」

という指導をしています。

乳脂肪は動物性脂肪なので、原則として避けるべき。

カゼインなどの乳たんぱくが、アレルギーの原因になる。

一部の癌を増やすことがわかっている。

などの理由があるからです。

また、牛乳に関する研究は、乳製品を取り扱う企業が資金提供していることも多く、そのへんのバイアスがかかっている可能性があります。

そのうえで、摂りすぎに注意すべきという結論になっている点に注意が必要です。

 

いずれにしても、日本で1日に3杯も牛乳を飲む人は稀でしょう。

適量であれば、ほとんど健康に影響はないはずです。

 

以上を考慮すると、大人の乳製品との付き合い方は

 

液体の牛乳をがぶ飲みするのは勧められない。

ヨーグルトやチーズといった発酵食品を嗜好品として楽しむ。

 

ということになるでしょう。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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