マグネシウムは体内に豊富にあるミネラルです。
マグネシウムは、体内におけるさまざまな生化学反応を制御しています。
エネルギー産生
タンパク質の合成
肝臓での解毒
神経伝達の制御
心機能の維持
血圧調節
など400種類以上の酵素系に関わっていることがわかっています。
これだけ多くの化学反応に関与する物質は稀です。
生命活動にとって、それだけ重要な元素ということになります。
人体に25g程度あり、50~60%は骨に、残りのほとんどは軟部組織に存在します。
血液中には1%未満です。
したがって、血液中のマグネシウムを測っても、マグネシウムが不足しているかどうかはわかりません。
ただ、現代人には不足しがちなのは確かです。
ストレス、飲酒、加工食品摂取により消費されます。
特に、基礎疾患がある場合などは、欠乏症を起こすことがあります。
不足すると、
骨粗しょう症
うつ、不安、無気力などの神経・精神疾患
心疾患、不整脈などの循環器疾患
食欲不振や下痢、便秘 などの消化器症状
などが起きてきます。
そのリスクが高い状態として、
クローン病などの消化器疾患(吸収不良)
2型糖尿病(排泄量増加)
アルコール依存症(摂取不足など)
高齢者(吸収能力低下)
利尿薬などの薬剤投与中
などがあります。
マグネシウムの代謝は主に腎臓で調節されていますので、不足したからといって、直ちに症状が出るわけではありません。
しかし、慢性的にマグネシウムの摂取量が不足すると、特定の病気になりやすいことが明らかになっています。
◎高血圧症、心筋梗塞、脳梗塞
いずれも、マグネシウム摂取量が多いほどリスクが下がる傾向がみられています。
◎2型糖尿病
マグネシウムは糖代謝にも重要な働きをしています。
不足すると、インスリンが作られなくなったり(インスリン分泌不全)、インスリンが効きにくくなったりします(インスリン抵抗性)。
また、糖尿病状態では腎臓からマグネシウムが流出しやすくなるので、ますます状態が悪くなります。
大規模研究のメタ解析では、マグネシウム摂取量が100 mg/日増えるごとに、糖尿病のリスク15%低下することがわかっています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17645588/
◎骨粗鬆症
多くの研究結果から、マグネシウム摂取と骨密度との間に関連性があることが明らかになっています。
◎うつ病、不安、神経過敏、不眠、産後うつ病
マグネシウムは、セロトニン代謝に関わっています。
マグネシウム投与は、一般的な用量でうつ病の治療に効果があります。
不眠や不安も、マグネシウム摂取と関係があります。
◎片頭痛
600mg/日のマグネシウム摂取により、片頭痛の頻度が減少しています。
米国神経学会および米国頭痛学会は、ガイドラインにおいて、マグネシウム療法は片頭痛予防に対して「おそらく効果あり」としています。
ちなみに、当院での治療ではなぜか全例が改善します。
マグネシウムの摂取量だけでなく、GLP-1の作用のようでもありますが。
◎PMS(月経前症候群)
マグネシウム 250mg/日程度とビタミンB6 40mg/日の投与により、月経前症候群の症状が緩和されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3208934/
当院での治療でも、ほぼ全例が改善しています。
ほかにも長期記憶、アルツハイマー病などとも関連しています。
いずれも、健康的な食事と関連する病気ですので、マグネシウムとの関連を直接的に調べるのは困難ですが、不足しないようにしておきたい栄養素です。
摂取は食事からが推奨されます。
下の表に示すように、マグネシウムの多い食品は、健康によさそうな食品が多くなっています。
実際、マグネシウムが多い食品は、食物繊維が豊富なものが多いです。
ですので、糖質制限するとマグネシウム不足になります。
では、どのくらいのマグネシウムを摂る必要があるのでしょうか?
厚生労働省の推奨摂取量は、成人で300~420㎎とされています。
マグネシウムの含有量が多いものとして
ほうれん草などの葉野菜
豆、ナッツ類、種子類
玄米などの全粒穀物
があります。
(1オンスは約28g、1カップは240ml) | 1回の食事当たりのミリグラム(mg) | パーセント DV* |
ローストアーモンド (約28g) | 80 | 20 |
ゆでホウレンソウ、1/2カップ(120ml) | 78 | 20 |
シリアルビスケット、大2枚 | 61 | 15 |
調理済黒豆、1/2カップ(120ml) | 60 | 15 |
全粒粉パン、2枚 | 46 | 12 |
炊いた玄米、1/2カップ(120ml) | 42 | 11 |
炊いた白米、1/2カップ(120ml) | 10 | 3 |
特に、穀物に多く含まれていますが、胚芽やぬかを取り除く精白により、大幅に含有量が減ってしまいます。
ナッツやホウレンソウは、含有量が多いですが、たくさん摂れません。
豆が原料のコーヒーやチョコレートにも多く含まれていますが、砂糖と一緒に取ると吸収が悪くなります。
牛乳にもマグネシウムが多いことが強調されますが、あまり吸収はされません。
結局、穀物から摂ることが重要になりますが、白米だけだと不足になりやすいことがわかります。
サプリメントで摂ることもできます。
腎機能が未熟な子供や、臓器の機能が低下した高齢者では、中毒が起きる可能性があります。
しかし、腎機能が正常であれば、過剰な分は尿に排泄されます。
また、過剰に摂ったとしても、原則として腸で吸収されすぎるということはありません。
過剰に取ると下痢になります。下剤として使われるのはこのためです。
酸化マグネシウムは吸収されませんので、クエン酸マグネシウムなどがサプリメントとして使われます。
当院では、液体の複合ミネラルサプリメントを使っています。
イオン化されているので、吸収されやすいためです。
口から摂る以外の方法もあります。
マグネシウムは皮膚からも吸収されることがわかっています。
入浴剤(エプソムソルト)としての使うことで、血中濃度を上げることができます。
私は、マグネシウム単独で摂ることはありません。
穀物中心の食事であるうえ、液体の複合ミネラルも使っているためです。
偏頭痛やPMSも生活習慣病です。
こういったこともご相談ください。