Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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治療者が背負うカルマの話

(画像©手塚治虫プロダクション)

今日は非科学的な話です。Oxfordで研究者をやっていた私は、科学者と名乗ってよいかなと思うのですが、医師になりたての頃に一晩で何枚も死亡診断書を書くような生活をした影響か、哲学書や宗教書を読みまくった時期がありました。

カルマとはサンスクリット語で「行為の結果として蓄積される宿命」を意味します。

聖書でも「自分で蒔いた種は自分で刈り取る(you reap what you sow)」と書かれており、仏教でも「因果応報」という言葉があります。

現代でも、原因と結果の法則などといわれ、私もなんとなくあるのではないのかと思っています。

さて、治療者は、治療を受けた側の「カルマ」を代わりに背負いやすいようで、気をつけないと不健康になってしまう傾向にあるようです。

私も、30代の初め頃に体調を崩したことがあり、食事を見直すことで復活しました。当時、患者さんの経過によって、「良くなったのは自分の実力」、「うまくいかないのは自分の力不足」というような姿勢で診療していたこともあり、ストレスを受けすぎていたことが最大の原因だったと分析しています。まじめすぎたともいえますし、自分が命に干渉できるのだという非常に傲慢な考えとも言え、恥ずかしいのですが、若気の至りということで。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」というブラックジャックに出てくるセリフは非常に深いことに、医師になって十数年経ってからあらためて気づきます。

実際、病気が治るかどうかに医師の実力はほとんど関係なく、結局のところ患者さんの治そうという意思の強さによるところが大きいように思います。現在は、「医師はどうすれば、その人が持つ自然治癒力を最大限に活かせるか」を考え、徹底的にサポートにまわることを意識しています。

 

そうすることで、「自分で治す」「自分で変える」という意識を持ってもらいやすくなるので比較的うまくいきますし、治療者サイドとしても気負いすぎることなく仕事ができるようになったように感じます。

また10年後には違う心境になっていると思いますが、少なくとも、現在はできるだけ謙虚な態度で診療するように心がけています。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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