最近、この論文の解説記事の見出しが「炭水化物を摂りすぎると死亡率が上がる」となっているものをよく見かけるので読んでみました。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)32252-3/fulltext
カナダ人主導で書かれており、世界18カ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ自治区、ポーランド、南アフリカ、トルコ、バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)の35歳から70歳の135335名のアンケートによる食事調査を行い、中間値で7.4年の経過観察期間において、心血管リスクと総死亡のリスクと、炭水化物、蛋白質、脂質摂取量の関係を見ています。
炭水化物のところだけ抽出すると、
・追跡期間中の死亡は5796例で、4784人が心血管イベントを起こした。
・炭水化物の摂取量が多いことは、総死亡リスクの上昇に関係 死亡のハザード比は1.28だった。
・しかし、炭水化物摂取量と、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患による死亡とは、関連が見られなかった。
ということになります。
LANCETの非常に大きな規模の研究で、信頼性は高いといえます。とはいえ、総死亡リスクだけに関連し、心血管イベントとの関連がないというのもよくわかりません。このへんは、一回きりのアンケートによるコホート研究なので限界があります。
また、炭水化物を減らすことが健康に有益である証拠はなく、本文でもむやみに炭水化物を減らすのは推奨されていません。
私としても、この研究では、複合炭水化物と精製炭水化物が区別されていないので、概ねこういう結果になるだろうなと思いました。糖質制限に明確に反対している私ですが、精製炭水化物を摂りすぎることが有害であることは間違いないと考えています。
一方、植物性蛋白質、ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランス良く含む精製されていない穀物を取った方が長生きするというデータは過去にもたくさん出ており、短絡的に「炭水化物=悪」という考え方をしないでほしいと思います。
そもそも、穀物にも蛋白質や脂質が含まれていますので、「穀物=炭水化物」というのも間違いです。
PFCバランスばかり追いかけるのではなく、加工度の低い食品=質の高い栄養を摂ることに気を使ったほうが良いというのが私の考えです。