Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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アンチエイジングにはバランス感覚が重要:食べ過ぎは肥満、食糧不足は栄養不足で老化促進

太りすぎは、心臓や腎臓に大きな負担がかかりますし、脂肪組織から出る物質で炎症がおこり、老化が促進されることがわかっています。

だからといって、無理に食事を制限しすぎても、ストレスホルモンや栄養不足で早く老化してしまうと考えられます。

動物の体は、体を興奮、緊張させる交感神経と、体を休ませる副交感神経により調節されています。交感神経は、闘争、逃走のときに、身体機能を高める役割があるのですが、そのストレス状態(交感神経興奮状態)が続くと、体が疲れてしまい、最悪、死に至ります。そこで、食事、睡眠時に体をリラックスさせるのが、副交感神経です。ストレスからくる緊張を、食べることで解消しようとした結果、肥満が増えたと考えられます。

今よりも病気などで死ぬ可能性が高く、いつ食糧が足りなくなるかわからなかった昔の人たちのほうが、大きなストレスを受けていたと思われますが、食べ物も十分に無いため、現代のように肥満が問題になることはありませんでした。この100年で平均寿命が2倍伸びたのは、医学の進歩で新生児が死ななくなったことが大きいですが、食糧が十分供給され、栄養状態が改善されたと同時に、交感神経と副交感神経のバランスが取りやすくなったという要因も大きいと考えられます。

各国の平均寿命をみても、飽食のため伸び悩むアメリカに対し、アジア各国は近代化に伴い、寿命が伸びていることがわかります。

身近な動物として、猫を例に取ると、野良猫の平均寿命は5年以下なのに、飼い猫だと15年に伸び、ギネスブックの記録では38年以上生きた猫もいたようです(私の実家で飼われている猫も、20歳近くになっています)。このように、動物の寿命は、環境によって随分変わることがわかります。

近代化(家畜化)され、食べ物がいつでも食べられる環境だと、体脂肪率は増えますが、寿命も伸びると考えられます。

実際、昔の人の写真などを見ると、今の感覚からすると、実年齢よりも明らかに老けて見えます。29歳で亡くなったはずの吉田松陰の肖像画が、中年に見えてしまうのは私だけでしょうか?また、厳しい食事制限をする食事法の指導者は、年齢の割に老けて見え、早死にする傾向があります。これは、極端な制限による栄養不足や、ストレスホルモンの影響ではないかと、私は考えています。

食欲は、ストレスに対してバランスをとろうとする反応の一つと考えられるので、無理に抑えようとすると、老化を促進し、寿命を縮めてしまう可能性があります。

いずれにしても、太りすぎは問題ですが、食べることでストレスを解消できない、過酷な時代と比べ、現代は非常に恵まれているといえるでしょう。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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