Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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食欲刺激物質:神経ペプチドY (neuropeptide-y:NPY)

食欲を刺激する物質として研究されている神経ペプチドY(NPY)というものがあります。

NPYの特徴を箇条書きにすると、以下のようなかんじです。

・36個のアミノ酸から構成
・エネルギー収支の調整、記憶と学習などの過程にも関与
・脳内で、神経伝達物質として働いている
・内臓脂肪からも分泌される
・断食で増加
・脳でのNPY生産過剰が摂食障害の一因と考えられている
代謝に与える作用としては
・強力な食欲刺激作用
・血液中のグルココルチコイド(ステロイドホルモン)の濃度を上げる
・インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)
・脂肪の量を増やす
※ステロイドホルモンも食欲を増やし、インスリン抵抗性、肥満を惹き起こす
つまり、体重を増やす方向に作用するホルモンですね。
さらに、NPY自体がNPYの分泌を刺激する(Autocrineという生物学では一般的な現象)作用もあるため、増え始めると一気に増えてしまうようです。

 

肥満者では、内臓脂肪が増える→NPY増える→脳内でもNPYがNPYを刺激してもっと増える→脂肪が増加→NPYがさらに増える・・・という悪循環の形成が、容易に想像できます。
実際、ある時から急に太りだして止まらなくなる人がいますが、この悪循環が起こっている可能性があります。

 

NPYを測定することで、減量後のリバウンドが予想できるかもしれないという研究もあり、総合的に考えると、肥満の悪循環に一役買っているのは間違いなさそうです。

 

The role of PYY and GLP-1 in appetite control. PYY, peptide tyrosine tyrosine; GLP-1, glucagon-like peptide 1; ARC, arcuate nucleus; NPY, neuropeptide Y; AgRP, agouti-related peptide; POMC, pro-opiomelanocortin; CART, cocaine- and amphetamine-regulated transcript; ME, median eminence; AP, area postrema; NTS, nucleus of the tractus solitaries.

まだまだ不明な点は多いですが、GLP-1は、NPYを抑制する作用があるようで、これが他の薬剤や方法と比較しても、リバウンドが少ない要因だと考えられます。

この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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