Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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リンの摂りすぎで老化する!

 

リンは、すべての生物に必須のミネラルです。

カルシウムとともに、骨に多く含まれています。

また、細胞膜や核酸の材料としてだけではなく、

エネルギー代謝や脂質代謝などにおいて重要な役割を担っています。

必要摂取量が多い、いわゆるマクロミネラルの一種です。

 

 

体内でのリンの役割

 

骨の構成成分

生体膜のリン脂質

DNAやRNAといった核酸

ATPなど高エネルギーリン酸化合物

 

 

腎機能が正常であれば、過剰なリンは体の外に排泄されます。

しかし、腎機能が低下するとそれができなくなります。

臨床では、透析のときにリン過剰が問題になります。

リンが過剰になると、骨を溶かして血液中のカルシウム濃度を高める働きをする副甲状腺ホルモンが出すぎてしまいます。

当然、骨は弱くなり、骨粗鬆症になりやすくなります。

また、溶け出したカルシウムが血管に沈着し、ひどい動脈硬化を起こします。

実際、透析患者さんの骨はスカスカ(レントゲンで薄い=カルシウム密度低い)ですし、大きな血管には石灰化(カルシウム沈着)を伴ったひどい動脈硬化が見られることが多いです。

 

この流れだけ見ても、体にリンを貯めること自体が老化のスイッチを押していることがわかります。

 

さらに、リン過剰は分子レベルでも老化を進めます。

抗老化ホルモンKlotho(クロトー)というホルモンがあります。

過剰発現させたマウスは、通常の1.3倍長生きし、欠損させると老化が加速することがわかっています。

ちなみに、このホルモンをつくるクロトー遺伝子を発見したのは日本人(黒尾誠先生)です。

 

クロトーは、主に腎臓に発現しており、

 

腎臓からのリンの排泄を増やす

(尿細管でのリン再吸収を抑制)

ことがわかっています。

 

クロトーが減ると、体にリンがたまりやすくなるということです。

 

クロトーは、

 

腎機能が低下すると減る

高リン食で減る

低リン食で増える

 

という性質があります。

 

リンは細胞、遺伝子の構成要素としてなくてはならないものですが、

アンチエイジングの観点からは、摂りすぎに注意したいものです。

 

動物実験でも、リンの毒性で老化が促進されることがわかっています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2923352/

 

先進国で生活する限り、リン不足になることはまずありません。

リンは、魚介類、卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。

糖質制限すると過剰になりやすくなります。

極端な糖質制限で急速に老けるのは、リン過剰が影響している可能性があります。

 

ただ、そんなに怖がる必要はありません。

有機リンの吸収率は40%程度です。

腎機能が正常であれば、排泄されますし、普通の食品から摂る限りは心配いりません。

 

問題なのは、食品添加物などに含まれている無機リンです。

 

無機リンの吸収率はなんと90%以上あります。

過剰摂取すると、腎機能が正常でも副甲状腺ホルモンを上昇させてしまうことがわかっています。

また、鉄、マグネシウム、亜鉛などのミネラルを吸着してしまうので、ミネラル不足になりやすくなります。

ミネラル不足は代謝を悪くしますので、間違いなく老化を促進します。

無機リンはできるだけ避けたいものです。

 

さて、無機リンを多く含む添加物には、以下のようなものがあります。

 

pH 調整剤

調味料(アミノ酸等)

乳化剤

かんすい

イーストフード

膨張剤、ふくらし粉、ベーキング パウダー

ガムベース

 

加工食品には必ずどれかが含まれています。

 

一見、これらの添加物が入っていないようにみえる商品でも注意が必要です。

 

日本には「キャリーオーバー」というルールがあり、材料に含まれている添加物の表示が免除されます。

魚肉ソーセージや練り物の材料「魚肉すり身」にリン酸塩が含まれていても、表示しなくてもよいのです。

また、店頭販売のパン屋お菓子、コンビニのおでんなどのバラ売り商品には表示の義務はありません。

 

メーカー側の主張としては、摂取基準量の範囲内だから安全!ということですが、私は信じるに値しないと考えています。

 

大量に摂れてしまう乳製品にも注意が必要です。

カルシウム・リン比を根拠に安全性を主張していますが、問題は絶対量です。

特に、プロセスチーズには乳化剤やPH調整剤などの無機リンが入っており、腎機能が正常でも副甲状腺ホルモンを刺激しているはずです。

実際、チーズの摂取量と骨折のリスクは相関しますので、このあたりも原因ではないかと考えています。

 

私は、帰国してからだけでも、少なくとも数千人の食事について、細かく問診してきました。

加工食品中心、食事の大半がコンビニという人たちの見た目は、年齢より遥かに老けて見えます。

リンという一面だけみても、加工食品はできるだけ避けるべきでしょう。

低リン食でクロトー遺伝子が活性化しますので、アンチエイジングの観点からも加工食品は最悪です。

 

どんどん体が大きくなる成長期の子供であれば、それほど摂りすぎを心配する必要はないでしょう。

もちろん、加工食品は最小限という条件はあります。

しかし、われわれのような大人は、摂りすぎに注意すべきでしょう。

 

わたしも、家族ができてからは、かなりのリン摂取量になっています。

忙しくて加工食品も増えてきているので、注意しなくては・・・。

 

みなさんも、無駄に老化しないために、リンを減らす食生活を意識してみてください。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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