Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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骨粗しょう症とカルシウム

 

骨粗しょう症が心配です。

カルシウムのサプリメントは必要でしょうか?

 

この質問も頻繁にあります。

結論から言うと、普通にバランスの取れた食事を摂っている限り、必要ありません。

ただし、摂った方が良い可能性がある場合もあるので、データを確認してゆきましょう。

 

【カルシウムの基礎知識】

カルシウムは体内に最も多く含まれるミネラルです。

カルシウムは骨の構成成分のイメージが強いですが、ものすごく重要な生理活性物質でもあります。

具体的には、

 

筋肉の収縮と拡張

筋肉の機能

神経の伝達

細胞内のシグナル伝達

ホルモン分泌

血液の凝固因子

 

などに必要とされます。

 

私も、オックスフォードで、インスリン分泌細胞を使って、細胞レベルでカルシウムイオンがどういう動きをするかを、いろいろな方法で研究していました。

 

最も重要な情報伝達物質の一つですので、血液中のカルシウム濃度は極めて狭い範囲でコントロールされています(8.8~10.4mg/dL)。

それより多いと脳機能がおかしくなったり、心臓が止まったりと、命に係わることがあります。

少ないと、神経が過敏になり、テタニーと呼ばれる手足のしびれ、筋肉のけいれんが起きてきます。

 

ですので、食事の変化によって、血液中のカルシウム濃度が変動することは、ほとんどありません。

 

カルシウムは、ものすごく重要なので、できるだけ大きな貯蔵庫が必要になります。

これが、「骨」です。

 

体内のカルシウムの99%は、骨および歯に貯蔵されています。

 

そして、この貯蔵庫の中身は、結構な速さで入れ替わっています。

 

その意味で、骨も、流体なのです。

 

ます。では、どのくらい摂取したらよいのでしょうか?

厚生労働省の基準では、成人だと1000~1200㎎/日になります。

年齢、性別でかなりの違いがあります。

 

カルシウムの推奨栄養所要量(RDA)
表1:カルシウムの推奨栄養所要量(RDA)
年齢 男性 女性 妊婦 授乳婦
生後0~6カ月* 200 mg 200 mg
生後7~12カ月* 260 mg 260 mg
1~3歳 700 mg 700 mg
4~8歳 1,000 mg 1,000 mg
9~13歳 1,300 mg 1,300 mg
14~18歳 1,300 mg 1,300 mg 1,300 mg 1,300 mg
19~50歳 1,000 mg 1,000 mg 1,000 mg 1,000 mg
51~70歳 1,000 mg 1,200 mg
71歳以上 1,200 mg 1,200 mg  

 

食事からのカルシウムが少なくても、テタニーなどのような症状が出ることはありません。

 

そのかわり、骨に蓄えられていたカルシウムがどんどん流出してしまいます。

 

統計上も、長期的なカルシウム摂取量の不足で骨減少症になることがわかっています。

 

特に、閉経後の女性は、骨粗しょう症のリスクが上がります。

 

女性ホルモン(エストロゲン)は、骨を壊す細胞(破骨細胞)を抑制し、新しい骨をつくる細胞(骨芽細胞)を刺激します。

つまり、骨のカルシウムを増やす方向に作用しています。

 

閉経後最初の1年間は骨量が35%も減ってしまいます。

 

ここで、カルシウム摂取量が不足していると、骨粗しょう症になりやすくなります。

ただし、どんなにカルシウムを摂っても、骨量減少を止めることはできません。

ホルモン補充療法の有効性は確認されていますが、ここでは割愛します。

 

閉経で骨量が減るのは避けられませんが、骨粗しょう症になる人は少数派です。

50歳以上の女性の4人にひとりが骨粗しょう症といわれていますが、4人中3人は、問題がないわけです。

 

この差は、もともとの骨量からきています。

最高骨密度が高いほど、骨粗しょう症になりにくいことがわかっています。

閉経前までに、しっかり骨密度を高めておくことが重要ということです。

 

骨密度は、成長期に増加し、30歳ごろに骨密度はピークに達します。

したがって、特に若い時期に、十分な量のカルシウムとビタミンDを摂っているかどうかが勝負になります。

 

若い時期に、食事制限型のダイエットをしてしまうと、将来の骨粗しょう症のリスクが上がります。

 

閉経後の骨からカルシウムが抜けやすい環境で、やみくもに食事を減らせば、骨粗しょう症まっしぐらです。

 

体からの要求を無視した無理な方法は、いろいろな意味で危険です。

 

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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