Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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カルシウムサプリメントは摂るべきか

 

カルシウムの摂取が重要ということは、前回説明しました。

 

では、サプリメントで摂っておけば安心なのでしょうか?

 

病気ごとにそのメリット、デメリットを見てみましょう。

 

 

骨粗しょう症予防にはある程度有効

閉経後女性の場合、カルシウムとビタミンDのサプリメントを摂取することで、骨折や転倒(骨折の原因)が減ります。

これに関して、米国予防医学専門委員会は、1000㎎以下のカルシウムサプリメントの摂取を推奨しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23440163/

 

米国食品医薬品局(FDA)も、

「十分にバランスのとれた食事の一環として、適正量のカルシウムを摂取すると、骨粗鬆症のリスクが低下することがある」

「身体的活動とあわせて、健康的な食事の一環として適切な量のカルシウムとビタミンDを摂取すると、晩年における骨粗鬆症のリスクが低下することがある」。

 

という立ち位置で、そこそこ骨粗しょう症の予防にはなりそうです。

 

 

大腸がんの予防になるかどうかは微妙

食品、サプリメントから大量のカルシウムを摂取すれば、大腸がんが予防できるという、複数の報告があります。

700~800 g/日のカルシウムを摂取することで、大腸癌の発現リスクが半分近くまで減少しています。

しかし、36,282人の閉経後女性が1日当たり1,000 mgのカルシウムと400単位のビタミンD3のサプリメントを7年間投与された研究では、進行結腸直腸癌のリスクにはプラセボと比べて有意差は認められませんでした。

まだよくわからないということです。

多少の効果はあるかもしれませんが、予防を目的としてカルシウムのサプリメントを推奨する段階ではありません。

 

 

 

心臓病を増やす可能性あり

以前は、カルシウムサプリメントの摂取で虚血性心疾患が減るといわれていました。

しかし、最近では、逆に心疾患が増えるのではないかというデータのほうが優勢になっています。

男性が1,000 mg/日以上のカルシウムをサプリメントから摂取した場合、心疾患で死亡するリスクが20%上がりました(女性では有意差なし)。

 

なお、閉経後女性においては、カルシウムおよびビタミンDのサプリメントで心臓病などを増やすということはないというデータが出ています。

 

最近の研究では、食事からとサプリメントからでは、逆の結果になる可能性が示唆されています。

 

2020年のアメリカの報告では、

 

食品からカルシウムを摂った場合→動脈の石灰化が27%低下

サプリメントから摂った場合→石灰化リスクが22%上昇

 

という結果になっています。

 

サプリメントだと、リスクが上がるようです。

いろいろなことが考えられます。

多くのサプリメントは、吸収をよくするために、炭酸カルシウムやクエン酸カルシウムのかたちになっています。

おそらく、急激に血液中のカルシウムが増えるのがよくないのでしょう。

急に血液中のカルシウムが増えると、血管自体にカルシウムが沈着してしまいます。

これが、動脈硬化につながります。

また、カルシウムイオンは凝固因子の一つ(第Ⅳ因子)ですので、高カルシウム血症が起きれば血液が固まりやすくなります。

心臓の血管(冠動脈)が詰まれば、心筋梗塞になります。

 

心臓病がある場合は特に、カルシウムサプリメントは避けた方がよいでしょう。

 

 

腎臓結石を増やす

複数の研究で、サプリメントによるカルシウム摂取と腎臓結石のリスクに正の相関があることがわかっています。

リスクは1.2倍程度です。

腎臓結石の多くはシュウ酸カルシウムからできています。

尿のカルシウム濃度が上がれば、結晶しやすくなるのは、当然といえば当然です。

 

 

体重を減らすことはなさそう

カルシウムサプリメントがダイエットに効くのではないかという説があります。

カルシウムを大量に摂ると、甲状腺ホルモンと活性型ビタミンDの生成量が低下します。

その結果、脂肪細胞中のカルシウム濃度が低下し、脂肪細胞中の脂肪分解が促進されるというものです。

また、脂肪酸とカルシウムが結合すると、吸収されにくくなるのではないかと考えられています。

しかし、2012年に実施されたメタ解析では、カルシウムの大量摂取と体重の関係は認められませんでした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22932282/

 

以上を考慮すると、カルシウムをサプリメントで摂るのは、デメリットが大きいようです。

効果があると考えられている骨粗しょう症でも、サプリメントで摂るやりかただと、人によっては有害になることがあります。

特に、摂りすぎには注意が必要です。

 

 

食品から摂る限りは、リスクがありませんので、食事から摂りましょう。

乳製品の含有量が高いですが、動物性脂肪も摂ることになってしまいます。

ですので、乳製品は控えめにすることをお勧めします。

小魚を骨ごと食べたり、葉野菜を多く摂ったりするとよいでしょう。

 

カルシウムは、食事から摂りにくく、不足しがちなことも事実です。

特に、閉経後女性は、サプリメントを使うメリットがありそうです。

食事を減らすタイプのダイエットをする場合も、カルシウムが不足しないよう、注意が必要です。

また、汗にも結構な量のカルシウムが含まれていますので、よく汗をかく人は、不足しやすくなります。

私も、自転車長距離通勤なので、夏場はものすごく汗をかくようになりました。

今は常用していませんが、風化サンゴの粉末が良い感じです。

カルシウムの比率はそれほど高くなく、他のミネラルが複雑なバランスで含まれているので、食品に分類されると考えています。

クリニックでも扱っていますので、興味のある方はご連絡いただければお分けします。

 

最近、個人的にドロマイトという鉱石も、試してみています。

天然由来でカルシウム:マグネシウム比が2:1と理想的になっています。

どちらかというとマグネシウムの補給に使っています。

どうやっても飲みにくいので、いまのところあまりお勧めできませんが。

 

いずれにしても、できるだけ食事から摂るのが理想です。

私は、「骨粗しょう症リスクが高い場合、不足しやすい場合に、自然のミネラルを摂る」でよいと考えています。

瘦せるためや、大腸がんの予防目的でサプリメントを摂るのはあり得ません。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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