Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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ビタミンKとビタミンD

 

 

ビタミンといえば、せいぜいA~Eくらいまでが有名なところで、ビタミンKについては、あまり知らないという人が多いかもしれません。

 

ビタミンKの主なはたらきは、血液凝固に関するものです。

ドイツ語の凝固「Koagulation」に由来しています。

 

血液凝固因子(プロトロンビンなど)ビタミンといえば、せいぜいA~Eくらいまでが有名なところで、ビタミンKについては、あまり知らないという人が多いかもしれません。の補酵素として作用しています。

ビタミンKが欠乏すると、血が止まりにくくなります(これを利用した抗凝固薬がワーファリンです)。

 

ビタミンKは骨の代謝にも不可欠です。

骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化します。

その結果、骨の形成を促します。

ビタミンKとビタミンDを同時に摂ることで、骨密度を高めることができます。

動脈の石灰化を抑制する作用もあります。

体の組織から骨にカルシウムを移動させる働きと言い換えてもよいでしょう。

欠乏すると、動脈や臓器に石灰化が起きやすくなります。

 

ビタミンKは、ビタミンDと協力して、このような作用をしていることがわかっています。

https://www.hindawi.com/journals/ije/2017/7454376/fig1/

 

 

実際、ビタミンDとビタミンKの作用は、重なるところが多いです。

カルシウム代謝

ビタミンDとビタミンKは、いずれも骨を強くする方向に作用します。

どちらが不足しても骨粗しょう症のリスクが上がります。

 

 

免疫

いずれも抗がん作用が期待できます。

日本人のコホート研究で、血中ビタミンD濃度が高いほどがんになるリスクが下がることがわかっています。

ビタミンKも、投与することで肝がんのサイズを小さくするなど、がんを抑制する方向に働いていると考えられます。

また、ビタミンKは、炎症を抑える働きは認められませんでしたが、体の酸化ストレスを減らすことがわかっています。

 

糖代謝

いずれも血糖を下げる作用があると考えられています。

ビタミンDとビタミンKを同時に摂ることで、インスリンが出やすくなると同時に効きやすくなり、コレステロールの値も改善されます。

 

このように、ビタミンKとビタミンDは、協力して作用することが多いようです。

 

ビタミンDを多量に摂っても、副作用が起きることは稀です。

しかし、ビタミンD中毒症として、血中カルシウム濃度の上昇、それに伴う不整脈、腎障害、組織の石灰化があります。

Jeff T. Bowlesは、これらの副作用は、ビタミンD大量投与により、ビタミンKが消費され、ビタミンK欠乏のため起きると主張しており、私もおそらくそうだろうと考えています。

いずれにしても、ビタミンDとビタミンKは、同時に摂ることで相乗作用が期待できます。

特に、ビタミンDを摂っている場合は、積極的にビタミンKも摂っておきたいところです。

 

ビタミンKは、大きくビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)の2つにわけられます。

ビタミンK1は植物からつくられ、ビタミンK2は動物が作ります。

 

ビタミンKはさまざまな食品中に広く含まれますし、ビタミンK2は腸内細菌によっても合成されます。

発酵食品を多くとっている日本人で不足することは稀です。

 

しかし、腸内細菌叢ができていない新生児では、ビタミンK欠乏による出血症状が出ることがあります。

ビタミンKを合成する腸内細菌を殺してしまう抗生物質にも注意が必要です。

抗生物質の長期使用は、ビタミンK欠乏症を引き起こします。

ワーファリンを使っている人に抗生物質を使うと、ワーファリンが効きすぎてしまうのも同じ理由です。

 

また、高齢者でも、ビタミンK欠乏になりやすくなります。

ビタミンKの吸収には、胆汁が必要です。

膵液や胆汁などの消化液は、年齢とともに分泌量が減ります。

結果、腸管からの吸収量が減ってしまいます。

歳を取るほど、ビタミンKの必要量は増えます。

一般に、骨密度は年齢とともに低下しますが、ビタミンK不足もその一因かもしれません。

 

では、われわれはどのようにビタミンKを摂ったらよいのでしょうか。

 

ビタミンKを多く含む食品として、納豆、ブロッコリー、ほうれん草などが挙げられます。

特に、納豆は、腸内でもビタミンKを合成するので、含有量以上の効果が期待できます。

納豆を日常的に摂っている人は、そうでない人の2倍のビタミンKを摂っているという報告があります。

納豆は、他にも好ましい効果が期待できる優秀な食品なので、摂った方がよいでしょう。

私も毎日食べるようにしています。

 

これらの食品は、摂るとワーファリンが効かなくなってしまうので、ワーファリン内服中に摂ってはいけません。

ワーファリンは良い薬なのですが、こういった健康的な食品の摂取が制限されるという問題があります。

最近は、違う機序でワーファリン並みかそれ以上の抗凝固作用を持つ薬(DOAC)があり、そちらが主流になっています。

 

ビタミンKは脂溶性ビタミンですが、多量に摂取しても健康被害はありません。

したがって、上限量は設定されていません。

 

安全なので、サプリメントを摂るのも悪くないかもしれませんが、健常人にはそれほど必要はないでしょう。

ビタミンDをサプリメントで摂っている場合でも、毎日納豆を食べておけば大丈夫だと考えています。

 

なお、GLP-1には骨密度を維持する効果があります。

ダイエットすると骨が弱くなるのが問題ですが、そのデメリットを打ち消せるなにかがあるということです。

GLP-1と骨

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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