Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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亜鉛で風邪が治る?

 

今は落ち着いていますが、これから風邪の季節になります。

風邪に亜鉛摂取が良いことは、以前から言われているところです。

今回は、亜鉛と免疫についてのまとめです。

 

亜鉛は全身の細胞に存在するミネラルです。

 

亜鉛は体内に歯、骨、肝臓、腎臓、筋肉に多く含まれます。

 

200種以上の酵素反応に関わっており、生命の維持に必須のミネラルです。

 

不足すると、味覚障害や皮膚炎、脱毛、食欲不振などが起こるのは有名です。

 

小児で不足すると、成長障害、性腺発育障害がみられます。

この他、慢性下痢、貧血、催奇形性、精神障害などが起こる可能性が示されています。

 

タンパク質およびDNAの合成にも必要です。

不足すると傷が治りにくくなります。

 

栄養失調に伴う慢性の下痢に亜鉛を投与すると改善することがわかっています。

 

また、ビタミンAを介した抗酸化系にも関与しています。

 

そして、免疫で重要な働きをしており、細菌やウイルスを防御するのに役立ちます。

具体的には、

 

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を増やす

抗炎症性のタンパク質を増やす

気道の線毛運動を強化する

 

ことがわかっています。

不足すると免疫機能が低下してしまいます。

 

 

 

実際、亜鉛のサプリメント(亜鉛トローチ)を摂ることで、風邪やアレルギーの症状が緩和される可能性を示す研究結果が出ています。

 

50歳以下の成人、約200人の検討で、亜鉛トローチを飲むことで、風邪の症状がある期間の短縮(3~4割減)が見られました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28515951/

 

 

ポイントとしては、風邪だと思ったらできるだけ早くのむこと(24時間以内)が重要です。

ウイルス量が少ないうちに、免疫機能を高めて処理してしまったほうが有利ということです。

これはすべてのウイルス疾患にいえることです。

 

また、トローチとして摂る必要があります。

どうも、粘膜からの直接吸収が重要らしいです。

ただし、トローチだと、糖尿病がある場合は血糖がものすごく上がってしまうので、普通のタブレットを使った方がよいでしょう。

高血糖は免疫機能を大幅に低下させてしまいますので。

 

風邪に対する用量は80mg〜100mg/日と多めです。

これより低用量だと効果が出ないようです。

これは、一般的な推奨量をはるかに超えています。

風邪をひいたときは、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の消費が増えます。

おそらく、免疫システムに動員されるので、大量に必要なのでしょう。

最近、亜鉛トローチは風邪に効果がないとする報告も出ていますが、用量が足りていないだけだと考えられます。

 

味覚障害、脱毛などの亜鉛不足の症状は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状、後遺症と似ています。

私の直感ですが、

新型コロナウイルスに感染

→亜鉛を大量消費

→亜鉛不足の症状出現

という流れがあるのではないかと考えています。

 

だとすると、亜鉛やビタミンDなどをはじめとしたビタミン、ミネラルを補充することで、症状の緩和、解消が期待できるはずです。

成人の耐容上限量(飲み続けても副作用が出ない量)は40 mg/日とされています。

しかし、感染症の症状がある場合は、100㎎/日以上摂っても問題ないでしょう。

イギリスの科学雑誌(BMJ)でも、新型コロナウイルスの感染を拡げないために、亜鉛は重要としています。

https://www.bmj.com/content/368/bmj.m864/rr-1

 

 

なお、亜鉛には致死量がありますが、5000㎎~です。

 

普通に起こることはまずありません。

 

摂りすぎよりも、不足が問題になる栄養素といえます。

 

ただし、亜鉛だけを多量に摂ってしまうと、鉄や銅の吸収が阻害されてしまいます。

 

免疫を落とさないためには、普段から意識して亜鉛を摂っておくことが重要です。

 

亜鉛の必要量は、年齢、性別によって違います。

 

ライフステージ    摂取推奨量

生後6カ月           2 mg

幼児7-12カ月     3 mg

小児1-3歳           3 mg

小児4-8歳           5 mg

小児9-13歳         8 mg

10歳代14-18歳:(男子) 11 mg

10歳代14-18歳:(女子) 9 mg

成人(男性)       11 mg

成人(女性)       8 mg

10代の妊婦         12 mg

妊婦       11 mg

10代の授乳婦      13 mg

授乳婦    12 mg

(厚生労働省)

 

高齢者は、消化管の機能が落ちるため、吸収効率が悪くなります。

20㎎程度摂る必要があります。

 

 

 

 

亜鉛が多い食品は比較的限定されており、不足しやすいです。

 

まず、亜鉛といえば牡蠣(14.5㎎/100g)です。

数個食べるだけで一日の所要量を満たせます。

(悲しいことに私は牡蠣に当たったことがあるので、怖くて食べていません)

ほかは、肉、魚介類(2~8㎎/100g)に多く含まれています。

ゴマ、ソバ、豆、ナッツ類(2~6㎎/100g)などにも含まれます。

かぼちゃの種(8㎎/100g)は、マグネシウムなども多く含まれているので、おすすめです。

しかし、植物性食品は動物性食品と比べると、フィチン酸などの影響で、比較的吸収が悪くなります。

極端な菜食主義をすると不足してしまいます。

カフェインも亜鉛の吸収を阻害する性質があります。

また、アルコールは亜鉛の排泄を促進してしまいます。

お酒をよく飲む人は、亜鉛不足になりやすいので、特に注意が必要です。

 

いうまでもありませんが、ミネラルは、食事から摂るのが最も安全です。

 

それを知ったうえで、亜鉛不足になりやすい習慣がある人、風邪のひきはじめなどの場合は、サプリメントを利用するのもよいでしょう。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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