Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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味噌の色は濃い方がよい?

 

味噌汁は飲んだ方がよいですか?

という質問がよくあります。

 

味噌に対する否定的な意見として、

 

 

  • 味噌汁は塩分が多いので心配。

 

  • 大豆には抗栄養素が含まれているので避けた方がよい。

 

  • イソフラボンを摂りすぎたらがんが増えるというのを聞いたことがある。

 

  • 味噌にカビが生えることがあり、それを摂ると有害。

 

といったものがあります。

 

しかし、それでもなお、味噌は摂ったほうがよいです。

 

それぞれについて、反論してみます。

 

  •  味噌汁は塩分が多いので心配。

 

一般的に、味噌汁一杯に使われる味噌は15~20gです。

塩分に換算すると、1~2gになります。

 

塩分の摂りすぎは、高血圧の原因になるといわれてきました。

 

また、塩分の摂りすぎは、慢性炎症を助長し、老化を促進する可能性が報告されています。

 

WHOの基準によれば、塩分摂取量は1日6gまでとされていますので、毎食、味噌汁を多めに摂るだけで、オーバーしてしまいます。

 

ただ、塩分の摂りすぎで高血圧になるとは限りません。

 

いわゆる、食塩感受性高血圧は、日本人なら半数程度といわれています。

腎機能が正常であれば、2人に1人は塩分摂取量と血圧に関係がありません。

 

それどころか、味噌には、高血圧、糖尿病の予防効果があることがわかっています。

 

上原誉志夫先生によれば、3杯/日までの味噌汁では、血圧は上がらないとしています。

 

味噌汁を飲むことで腎臓からのナトリウム排泄が促され、むしろ、体内の塩分を出してくれるということです。

 

海外の研究でも、発酵食品に含まれる塩分では、血圧が上がらないことが報告されています。

 

味噌汁で摂る分には、それほど塩分を気にする必要はないでしょう。

 

もちろん、透析をしている、腎機能が悪いという場合は、塩分摂取量が優先されます。

味噌が腎機能を高めるとしても、機能している腎臓が無い状態であれば、塩分を出すことができません。

主治医の指示に従ってください。

 

 

塩分の摂りすぎは、体内の炎症レベルを上げ、老化を促進する可能性が示唆されています。

 

これも、味噌などの発酵食品であれば、心配は要りません。

 

また、味噌や醤油にはメラノイジンという健康に良い物質が含まれています。

 

ラットの実験ですが、メラノイジンを食品に加えることで、

 

コレステロールが下がる(脂肪の吸収を抑制)

 

糖代謝が良くなる(インスリン分泌がよくなり、糖尿病予防効果が期待できる)

 

腸内の乳酸菌が増える(食物繊維のように、腸内細菌のエサになる)

 

脳梗塞や腎障害が抑制される

 

などの効果が得られることがわかっています。

 

このメラノイジンは、いわゆるAGEs(Advanced Glycation End Products)、終末糖化産物の一種です。

 

AGEsは、食品を加熱したときに増える物質です。

 

老化の原因と考えられており、アンチエイジングの世界では悪者として有名です。

 

しかし、メラノイジンは、強力な抗酸化物質で、体の酸化を抑え、病気を予防します。

 

AGEsだから悪いということではありません。

その中にも、体に好ましい影響をもつものがあることを知っておきましょう。

 

味噌は、時間とともに色が濃くなります。

これはメラノイジンが増えるからです。

 

味噌に関しては、なるべく色が濃いものを選ぶほうがよいでしょう。

ただし、着色料などの添加物が入っていないという条件はあります。

 

 

このように、塩分を怖がって、味噌汁を摂らないというのはもったいないです。

 

 

 

  • 大豆には抗栄養素が含まれているので避けた方がよい

 

抗栄養素とは栄養の吸収を妨げる物質のことです。

 

ミネラルなどを吸着したり、消化酵素を阻害したりして、栄養状態を悪くする可能性が示唆されています。

 

大豆にはフィチン酸、酵素阻害物質などが含まれています。

 

 

実際、大豆に含まれるフィチン酸がミネラルの吸収機能を低下させてしまいます。

 

しかし、大豆のフィチン酸は熱や発酵で不活化されます。

 

日本では、茹でる、炒るなどの手が加わった状態で食べるので、問題はないでしょう。

 

生や、それに近い状態で大量に食べるのでなければ、とりたてて抗栄養素を心配する必要はありません。

 

 

デメリットを怖がるばかりに大豆を避けてしまうのはとても勿体ないです。

 

 

  • イソフラボンを摂りすぎたらがんが増えるというのを聞いたことがある。

 

 

一般的に植物は、他の動物から身を守るための毒素を持っています。

 

大豆も例外ではありません。

 

前述の抗栄養素、サポニンやレクチン、過剰なイソフラボンが問題視されることがあります。

 

たしかに、肝炎ウイルスに感染した人が多量のイソフラボンを摂取した場合、肝がんになるリスクが増えたという報告はあります。

ただ、治療薬ができたため。肝炎ウイルスに感染している人は、めったに見なくなりました。

 

動物実験では、大豆を発酵させることで、そういった害が無くなることがわかっています。

 

豆腐だと、大量に摂ると問題になるかもしれませんが、やはり、発酵食品の味噌として摂る分には、心配しなくてよさそうです。

 

 

  • 味噌にカビが生えることがあり、それを摂ると有害。

 

たしかに、真菌、細菌の毒素などによる汚染はあり得えます。

 

 

特に、カビ毒(アフラトキシン)はヒトに対して発がん性を持ち、原材料の段階で増える可能性があります。

つまり、畑や貯蔵庫で原材料の大豆がカビてしまっている可能性があるということです。

 

しかし、日本では問題がなさそうです。

 

日本の発酵食品に関する安全性の報告書では、麹菌、ミソ、醤油、日本酒からアフラトキシンは検出されませんでした。

 

日本にいる限り、カビに関しても、それほど心配はないでしょう。

 

 

ほかにも、免疫系にも良い作用があることがわかっています。

一説には、発酵食品中の乳酸菌がつくった物質が、人間の免疫系に信号を送っているようです。

 

日本人がコロナウイルスに強い傾向があるのは、発酵食品を多くとるからではないかという説もあります。

 

 

以上のように、発酵食品が健康に良いことは疑いがありません。

 

過去の観察研究によれば、納豆やみそなどの発酵食品の摂取が多いほど、死亡リスクが下がる傾向があります。

 

そんなデータが蓄積されていることもあり、最近、海外で味噌の人気が高まっています。

日本から海外への味噌の輸出量は、この30年で6倍になりました。

 

イギリスでも、オーガニックショップで味噌が売られていました。

日本での価格の数倍でしたが、品質が良かったので使っていました。

 

いっぽう、日本での消費は減っています。

 

 

偉大な先人たちが残してくれた文化を、もっと活かしましょう。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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