前回、鉄が免疫に重要な働きをしていることと同時に、組織毒でもあることを説明しました。
それゆえ、鉄の吸収は、ものすごく精密に調節されています。
感染や組織の保護の観点からは、組織の鉄濃度は低いほうが有利です。
そのため、鉄は基本的に非常に吸収されにくくなっています。
健康な成人であれば食事由来の鉄の約10%~15%が吸収されます。
鉄が足りていればあまり吸収されませんが、鉄不足であれば、よく吸収されます。
食事で摂る限り、過剰になることはまずありません。
特に、日本人は、欧米人と比べると低胃酸なため、鉄のイオン化がされにくいようで、貧血の頻度は高くなっています。
では、どうすれば鉄不足にならないですむのでしょうか?
食べ物に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分けられます。
動物性の肉などに含まれているヘム鉄のの吸収率は10%~35%と高いです。
植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率は2%~20%とされています。
ただし、これも腸内環境などによって変化します。
特に、ヘム鉄の摂取には注意が必要です。
ヘム鉄により、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、がんの発症リスクが増える可能性が報告されています。
非ヘム鉄ではこういったことは起こりません。
ヘム鉄は赤身の肉に多く含まれていますので、当然といえば当然です。
腸に炎症がある場合や、腸カンジダ症などのような状態が悪い時は、ヘム鉄はむしろ吸収されず、非ヘム鉄のほうが吸収が良いようです。
葉野菜や豆、穀物に含まれますので、そちらを中心に摂りましょう。
鉄の吸収を阻害する食品もあります。
牛乳
牛乳貧血という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
実際、乳製品を多くとる子供に鉄欠乏が多いことがわかっています。
乳製品に含まれているカゼインが、強力に鉄の吸収を阻害します。
さらに、カルシウム、リンにより鉄の吸収は阻害されます。
実際、1日に600ml以上の牛乳摂取は貧血と関係しています。
まあ、日本人でそんなに飲む人はほぼいないでしょうけど。
牛乳は完全栄養!牛乳にも鉄が含まれているので問題はない!
という主張はナンセンスだと思います。
種子類
玄米やナッツ含まれているフィチン酸(IP-6)は、ミネラルを吸着します。
厳格な菜食主義者が貧血になる原因の一つです。
フィチン酸には賛否両論あり、貧血の原因として悪者扱いする人と、抗酸化作用、重金属吸着作用から絶賛する人までいろいろです。
海外では、抗がん作用などを期待できるサプリメントとして売られていたりします。
お茶
お茶に含まれるタンニン=カテキンが鉄を吸着するので貧血になると考えられています。
私も、1日中日本茶を飲んでいて、ひどい貧血がある人を診たことがあります。
お茶を水に変えてもらったら改善したので、あるのではないかと考えています。
しかし、研究では、そこまで影響はないというものが多いです。
お茶自体が悪いのではなく、胃酸が薄まりすぎたり、カフェインの利尿作用でミネラルが失われることも影響しているのでしょう。
リン酸塩
加工食品に含まれているリン酸塩も、鉄やマグネシウムの吸収を阻害してしまいます。
PH調整剤、結着剤、乳化剤などがそれにあたり、ほとんどの加工食品に入っています。
これは、次回、詳しく説明します。
鉄は、子供や妊娠可能年齢の女性、特に妊婦で不足しやすくなります。
鉄だけみても、加工食品は避けたいですね。
鉄は生命に直結しているミネラルだけあって、鉄代謝は奥が深いです。