昔から、お茶は肥満や糖尿病に効果があるとされています。
緑茶は日本人にとってなじみ深い飲み物です。
古くは最澄が比叡山で栽培したという記録があります。
その後、一旦、文化として廃れたものの、鎌倉時代に栄西が中国から種を持ち帰り、広めたといわれています。
当時は、いわゆる抹茶のようなかたちで摂取していたようです。
現在のような煎茶で飲むようになったのは、江戸時代からとされています。
日本文化にしっかり根付いている緑茶には、多くの健康メリットがあります。
緑茶にはカテキンが含まれています。
これが、体脂肪を減らすかどうかについては、多くの研究があります。
結論としては、「それほど大きな効果は期待できないが、体重減少効果は確実にある」です。
過去のデータを見る限り、カテキンを摂っている間は1.5㎏程度体重が減ります。
私のような疑い深い人間は、カフェインの利尿作用では?と考えてしまいますが、緑茶はしっかり体脂肪を減らしてくれています。
毎食、緑茶500ml程度(カテキン180㎎以上)を摂取することで、4か月後に体脂肪が8%程度減ることがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26569165/
カテキンを摂るのを中止すると体脂肪量が戻ってしまうので、効いているのは間違いありません。
科学的にもヘ〇シアで体脂肪が減ると言えます。
私も以前、飲んでいた時期があるのですが、カフェインが強すぎること、味と香りに難があり、飲みにくいことからやめてしまいました。
普通の緑茶でも体脂肪減少効果は期待できるので、必要はないでしょう。
カテキン単独だと、肝障害が起こることが知られています。
実験では、その肝障害は、お茶で起こらなくなることがわかっています。
ヘ〇シアで肝障害が起きるのではという説がありましたが、心配はないでしょう。
安全面からも、カテキン摂取はお茶からが無難です。
カテキンで体脂肪が減る理由は、脂肪吸収抑制と考えられていますが、次で説明するインスリン効果も大いに影響しているはずです。
こういった効果は、普通に摂れる程度のお茶でも得られます。
日本人に肥満が少ない一因だと考えられます。
緑茶がインスリン抵抗性を下げるという研究はたくさんあります。
緑茶を飲むことで、効率的にインスリンが働けるようになり、結果的に、少ないインスリン量で血糖を下げることができるということです。
運動と組み合わせることで、3倍くらいの違いが出るようです。
理由はよくわかりませんが、少なくとも、カテキンの抗酸化作用が関係しているようです。
膵臓の負担が減らせるので、当然、糖尿病の予防に有効です。
文部科学省科学研究費による大規模コホート研究(JACC研究)では、一日に6杯以上のお茶を飲む人は、ほとんど飲まない人と比べ、糖尿病になる確率が33%も少ないことを報告しています。
もちろん、糖尿病患者であっても、血糖コントロールを改善することがわかっています。
インスリン抵抗性が低下するので、食後血糖は下がります。
ストレスホルモンである血中コルチゾールを減らしてくれるのが大きいでしょう。
コルチゾールは、少し増えるだけでも、かなり血糖を上げてしまいますので。
さらに、緑茶の成分であるEGCG(エピガロカテキンガレート)は、唾液のアミラーゼを阻害します。
食事中のでんぷんは、消化酵素によってぶどう糖(グルコース)に分解されます。
アミラーゼは、唾液中に含まれる、でんぷんを分解するための最初の酵素です。
緑茶成分は、アミラーゼ活性を阻害してくれます。
つまり、でんぷんを食べても血糖が上がりにくくなるということです。
ご飯を冷やして食べると、アミラーゼが分解できないβ澱粉に変化するので、血糖値が上がりにくくなるのと同じ理屈です。
いわゆるレジスタントスターチを増やしてくれるということです。
血糖は上がりにくく、腸内細菌のエサが増えるので、非常に好ましい効果といえます。
ただし、それを期待するのであれば、食前~食事中に緑茶を摂取する必要があります。
お茶漬けは、早食いになりやすいのでおすすめできませんが、よく噛んで食べるのであれば、食後血糖が上がりにくい食べ方なのかもしれません。理論上ですが。
いずれにしても、比率としては、インスリン抵抗性改善の効果が大きいとので、こちらはそれほど気にしなくてもよいでしょう。
食後高血糖が、アルツハイマー病、脳血管性認知症の原因になることは、以前、久山町研究のところで説明したとおりです。
緑茶がアルツハイマー病を予防する可能性についても、多くの研究がなされています。
緑茶ポリフェノールが神経細胞を保護するのではないかと考えられています。
ポリフェノールの効果というよりは、インスリン抵抗性改善による食後高血糖の是正の結果と考えた方が合理的だと思いますが、結果は同じです。
緑茶の効果は、食後高血糖で起こること(心臓病、認知症、糖尿病、がんなど)を抑えることで得られていると理解できます。
日本人は、外国人と比較し、糖尿病になりやすいことがわかっています。
古くは、藤原道長が糖尿病であったことが有名です。
あの織田信長や徳川家康も、神経障害と思しき手足のしびれ、やたらと水を飲むなどの症状があったことから、糖尿病であったと考えられています。
昔は、糖尿病自体、稀な病気でしたが、支配者たちの血糖は高めだったようです。
千利休とお茶を飲んでいた豊臣秀吉は、それらしい記録が残っていません。
実際のところわかりませんが、お茶で糖尿病の予防ができていたのかもしれません。
実際、糖尿病の治療薬などなかった時代、お茶は薬として重宝されました。
血糖値の観点から、日本人の飲み物として、緑茶というのはよく合っています。
いまのところ、コーヒーには血糖を改善する効果はありません。
この際、切り替えてみてはいかがでしょうか?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3689013/