緑茶には殺菌作用があり、細菌、真菌(カビ)に対して有効です。
ウイルスに対しても有効で、以前から、緑茶がインフルエンザウイルスを不活化することが知られています。
最近、緑茶が新型コロナウイルスに対しても有効というニュースが話題になりました。
お茶の成分が、新型コロナウイルスのスパイク蛋白を包み込み、感染能力を奪うというものです。
京都府立大学の松田先生らのグループは、緑茶の成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)などにより、新型コロナウイルスの感染力が100分の1以下にまで低下することを発表しました。
ヒトの唾液と新型コロナウイルスを混ぜ、口の中の再現した状態を、緑茶、紅茶で10秒間処理すると、感染力が無くなります。
実験データを見ると、次亜塩素酸ソーダ並みのウイルス抑制効果があります。
これだけ効果があるのなら、緑茶で消毒用アルコールの代用ができるかもしれません。
クリニックでなにか開発してみようと思います。
アルコールは手が荒れますし。
さて、話を戻しましょう。
以下に、京都府立医大のホームページにあるQ&Aの一部を載せます。
Q.どんなお茶が新型コロナウイルスを不活化できるのか?
A.茶葉から抽出した、緑茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶について、試験管内で新型コロナウイルスを不活化することを見出しています。
メーカーや産地は検討していませんが、茶カテキン類(正確には、EGCG、TFDG、TSAなど)が多いお茶ほど効果は高いと考えられます。また同じ茶葉であっても、高い温度のお湯で抽出するほど、茶カテキン類の濃度は高くなります。
ペットボトルのお茶は、緑茶とほうじ茶は有効であることを確認しています。茶カテキン類を多く含むものがよいと考えられます。
Q.変異ウイルスへの効果は調べていないのか?
A.今回論文に発表したデータは、すべて変異ウイルスではなく、従来型のウイルスを用いた実験です(下記のように科学的な手続きを踏むと、実験結果が出てから正式な発表までにはどうしても時間が掛かってしまうのです)。
ただ、未発表のデータを簡単にお話ししますと、緑茶とEGCGはブラジル型には効果がありますが、イギリス型に対しては従来型ウイルスに比べて残念ながら効果が低いという結果を得ています。
Q.公衆衛生的な使い方ってどんなの?
A.マスクを着ける理由は、自分が感染しないこともありますが、それ以上に、万が一自分が感染していても周りの人に飛沫を通じて感染させないためです。
それと同様に、多くの人が他人と接する前にお茶を飲めば(とくに飲食店などでマスクを外したとき)、飛沫中のウイルスが不活化されることによって、周りの人への感染が減少し、結果的に人集団全体として感染拡大が減少できる可能性があると考えています。
体内に入ったウイルスを、お茶を飲むだけで不活化することはできませんが、飛沫のもとである口の中がきれいになるので、感染拡大の抑制は期待できます。
日本は、頻繁にお茶を飲む国です。
このお茶の効果は、日本で新型コロナウイルスの感染が比較的少なかった理由(いわゆるファクターX)のひとつと考えられます。
以上のように、緑茶は直接的に新型コロナウイルスの感染能力を奪っている可能性が高いです。
さらに、緑茶は腸内環境にも影響します。
腸には、大量の免疫細胞が存在しています。
最近の研究で、腸内環境と免疫は、強く関係していることがわかってきています。
緑茶に含まれている緑茶ポリフェノールは、腸内細菌の良質なエサになります。
カテキンには、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉を増やすことがわかっています。
さらに、殺菌作用で有害な菌を減らす働きがあります。
都合がよすぎるように感じますが、自然の成分では珍しいことではありません。
また、抗真菌作用もあるので、腸内の有害なカビを減らしてくれる可能性があります。
意外と知られていませんが、新型コロナウイルスに限らず、多くのウイルスは、腸内細菌にも感染します。
腸内細菌も、われわれの体細胞も、基本的なつくりは同じですので、当然といえば当然です。
われわれが新型コロナウイルスに感染すると、われわれの腸内細菌も同時に感染します。
新型コロナウイルスがトイレを介して拡がりやすいことも理解できますね。
新型コロナウイルスに感染すると当然、腸内環境が悪くなり、ますます抵抗力が落ちてしまいます。
お茶として摂ったカテキンは、吸収されたとしても、ウイルスを抑制できるほどの濃度にはなりません。
しかし、腸内ではある程度の抗ウイルス作用が期待できるくらいの濃度になります。
積極的にお茶を飲んでおくことで、腸内での新型コロナウイルス増殖を抑制できるかもしれません。
このように、緑茶は大きく
という2つの効果が期待できます。
マスク、うがい、手洗いと併せて、お茶を飲む習慣をつけておくと、感染リスクは減らせるはずです。