Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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【食べるともっと欲しくなる】動物性脂肪の依存性

 

食後なのにお腹が減ることはないでしょうか?

 

いろいろな理由が考えられます。

 

食事の内容が偏っていて、栄養が足りていないのかもしれません。

 

食後に高血糖になり、その反動で低血糖になる「反応性低血糖」が起きているのかもしれません。

 

意志力で食欲を抑えた反動で空腹感が出ているのかもしれません。

 

人によりさまざまですが、今回は、動物性食品が、食後にもっと食べたくなる一因ではないかという内容です。

動物性食品には、多かれ少なかれ、動物性脂肪が含まれています。

 

最近の研究で、動物性脂肪には強い依存性があることがわかってきました。

 

動物性食品といえば、肉類です。

ステーキ、焼肉、から揚げ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ベーコン・・・・

 

卵、乳製品、魚も動物性食品です。

 

これらの食べる量が増えたら、もっと食べたくなるということです。

 

依存状態、つまり、中毒になるということです。

この依存性は、アルコールやタバコ以上です。

 

このあたりについて、琉球大学の益崎裕章教授のグループが研究を行っています。

 

動物性脂肪を摂ることで、脳が必要なエネルギーや栄養成分を感知できなくなります。

 

つまり、どのくらいの量を摂ったらよいのかわからなくなり、

必要な微量栄養素が豊富な野菜類よりも、脂っこい食事を好むようになるということです。

 

その機序のひとつにホルモンがあります。

インスリン、レプチン、GLP-1、グレリンなどのホルモンは、食欲の調節に重要な働きをしています。

 

インスリンは、体内で血糖を下げる唯一のホルモンです。

 

あまり知られていませんが、食欲にブレーキをかけ、食べ過ぎを防ぐ作用があります。

 

動物性脂肪やトランス脂肪酸などは、インスリンの効果を大幅に落とします。

 

したがって、糖質と脂質を同時に摂ると、食後の血糖は上がりやすくなります。

 

焼肉+ライス

こってり系のラーメン

パン、クッキーなど(精製炭水化物+トランス脂肪酸)

 

こういった食品には、特に注意が必要です。

 

 

レプチンは脂肪細胞より分泌されるホルモンです。

 

摂食抑制とエネルギー消費亢進をもたらす抗肥満ホルモンとして知られています。

 

脂肪細胞を大量に持っている状態が肥満です。

 

レプチンは脂肪細胞で作られますので、肥満者の血中レプチン濃度は高くなっています。

 

食欲抑制ホルモンがたくさんあるのなら、食べ過ぎにはならないはずです。

 

なぜ、そうならないのでしょうか?

 

動物性脂肪の摂りすぎで、脳のレプチン効果が無くなってしまうことがわかっています。

 

主食が肉のアメリカ人やイギリス人が太っているのはこの影響が大きいと考えられます。

 

 

その食欲抑制、体重減少効果を日本で私が初めて紹介したGLP-1に対しても、悪影響があります。

 

動物性脂肪の過剰摂取は、インスリンやグルカゴンを分泌している膵臓の、GLP-1受容体(細胞にあるGLP-1の受け取り手)の数を減らしてしまいます。

 

さらに、GLP-1の分解も促進されてしまうので、血液中のGLP-1濃度も減ってしまいます。

GLP-1分解酵素であるDPP-4の活性が上がるためです。

肥満者では血中GLP-1濃度が下がっている原因の一つと考えられます。

 

動物性脂肪を摂ることで、GLP-1が効きにくくなり、濃度も低くなります。

当然、GLP-1の効果は弱くなります。

 

その結果、食べ過ぎが起こりやすくなり、体重が増えます。

 

 

ほかにもいろいろな理由が考えられますが、動物性脂肪によって、脳が「満足できない脳」になることは間違いないでしょう。

 

肉をいくら食べてもOK! というタイプの食事法は、これらの理由から非常に危険です。

 

動物性食品は減らした方がよいというデータは多いです。

 

たんぱく質も、植物から摂るほうがよいことが、多くの研究で証明されています。

 

日本の研究でも、かなり研究がされています。

 

総エネルギーに対する3%の赤肉・加工肉からのたんぱく質を、植物性たんぱく質に置き換えた場合のリスクは、

 

赤肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合

総死亡リスクが34%

がん死亡リスクが39%

循環器死亡リスクが42%

低下!

 

加工肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合

総死亡が46%

がん死亡リスクが50%

低下!

 

ということがわかっています。

 

 

動物性たんぱく質を摂りたいなら、魚がおすすめです。

 

赤肉を魚介類からのたんぱく質で置き換えても

総死亡リスクが25%

がん死亡リスクが33%

循環器死亡リスクが33%

低下します。

 

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8289.html

 

とにかく赤身の肉は健康によろしくないです。

禁止する必要はありませんが、毎日とるのはリスクが高いです。

特に、すでに何か病気を持っているのであれば、可能な限り減らすことをおすすめします。

自分の体型に不満がある場合も、できるだけ減らした方がよいでしょう。

 

 

最後に、私の考え方です。

 

私は30代前半で、肉類を食べると発疹が出るようになり、それ以降、食べていません。

一時期は完全菜食もやっていました。

アレルギー症状には効果が高く、ほぼ完璧に克服できました。

 

ただ、完全菜食だと、食事を伴う付き合いができなくなってしまいます。

状態が安定してから、魚と卵を再開しました。

その後、乳製品も摂るようにしました。

種類としては、肉以外の制限はしていません。

 

食事には楽しみの要素もあります。

健康状態に問題がないのであれば、たまに少量の肉類や加工食品を摂るのに問題はありません。

 

食事の制限は、病気などの理由がない限りは、あまりしない方がよいと考えています。

 

ただ、誰であれ、普段の食事として加工肉を摂るべきではないでしょう。

 

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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