Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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【インフルエンザワクチンは必要?】インフルエンザはどこへいった

 

 

最近、影を潜めているインフルエンザ。

内科医の間でも、「出た」という話を全く聞きません。

 

今シーズンはどうなるのでしょうか?

 

 

昨年は、新型コロナウイルスの感染対策の結果、多くの感染症が、軒並み例年比99%減でした。

マスク、手洗い、うがいを徹底するだけで、ここまでの効果が出るのはものすごいことです。

 

 

https://gyazo.com/1d577f6994f21fe9d14b0b20e1dc8350

 

https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoko2021.pdf

より引用

 

直近でもほとんど出ていません。

https://www.mhlw.go.jp/content/000864773.pdf

 

 

世界でもやはり、ピークの50-100分の1という状況です。

 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2545-related-articles/related-articles-501/10789-501r08.html

 

南半球で流行っていないので、今シーズンも少ないことが予想されます。

 

これを踏まえたうえで、インフルエンザワクチンが必要かどうかです。

 

外来でも、

「インフルエンザワクチンは打った方がいいでしょうか?」

と、よくきかれます。

 

ここは、難しいところです。

 

 

インフルエンザはRNAウイルスなので、非常に変異しやすいです。

 

話は少しそれますが、これはDNAとRNAの安定性が違うことが要因です。

分子生物学の実験をしていると、これはよくわかります。

 

われわれの細胞は、核の中にあるDNAの情報を基にRNAをつくり、それを翻訳してたんぱく質をつくっています。

 

「DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→たんぱく質」

いわゆるセントラルドグマです。

 

DNAの状態は、情報の保存が主な目的なので、安定です。

一方、RNAはたんぱく質をつくるのが目的で、用が済んだら分解される運命にあります。

実験で、DNAやRNAを抽出することがあるのですが、扱いがかなり違います。

DNAと比べRNAは、丁寧に扱わないとすぐに分解されてしまいます。

RNAのほうが不安定で、すぐに変化してしまうということです。

不安定=変異しやすい

とも言えます。

 

インフルエンザウイルスは、自分の持っているRNAをたんぱく質製造の過程に割り込みませ、自分のコピーを造らせます。

 

その過程で、ウイルスの特性は、一定確率でどんどん変化します。

 

したがって、インフルエンザワクチンは、対象になる株が毎シーズン変化します。

その選定は、専門家の先生方が行うのですが、実際のところ、当たるも八卦当たらぬも八卦です。

インフルエンザワクチンの有効性は60-70%といわれています。

しかし、年によっては、有効性が18%しかないこともあり、ほとんど意味がないことがあります。

 

注意すべき点は、有効率70%の意味です。

 

× 100人にワクチンを打ったら、70人はインフルエンザに罹らなくなる

 

  • 接種していない人の発病率を100とすると、接種した人の発病率が30になる

(100発症するはずのものが30で済んだので、100-30=70%)

 

仮に、全員が接種した場合、発病が70%抑えられるという解釈になります。

 

 

現状、インフルエンザはほとんど発生していません。

そもそも、ほとんど発病する人がいないということです。

ワクチンを接種していようがいまいが、発病する確率は数百万分の1程度です。

仮に接種していない場合の発病リスクを百万分の1だとすると、有効率70%のワクチンによって下がるリスクは

0.000001-0.0000003=0.0000007

となります。

 

私の個人的な意見ですが、さすがに意味ないと思います。

少なくとも、今シーズンのインフルエンザワクチンを打つ必要性は低いでしょう。

 

一般的な情報は厚生労働省のインフルエンザQ&Aページに詳しく書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

 

ここで、ワクチンの有効性についても書かれていますが、

「一定の効果がある」や「効果があるとされる」などの表現を使い、明言を避けています。

 

生産体制にもバイアス(偏向)をつくってしまうポイントあります。

最近では別の方法もありますが、インフルエンザワクチンの生産には数か月かかります。

シーズンの3か月くらい前から、ウイルス株の選定をしておかなくてはなりません。

南半球で流行っているものを参考にするわけですが、3か月もあれば変異する可能性は大です。

当然ながら、予定生産なので、生産量を変更することができません。

そして、シーズンごとに使い切る必要があります。

したがって、外した可能性が高い場合も、使ってしまわないと廃棄処分するしかありません。

 

 

このあたりの事情を考慮すると、理論上、必要性が低くても、「インフルエンザワクチンを打ってください」という圧力が常に存在することになります。

 

インフルエンザワクチンを打ちましょう!というメッセージを出している組織が、どういう根拠でそういっているのかを確認しておきたいところです。

 

流行しておらず、罹る可能性が低いのであれば、ワクチンによって減る発病リスクも小さくなります。

 

平成30年のデータですが、インフルエンザ関係で350億円以上が使われています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/yusikisyakaigi/dai16/sankou2.pdf

年によっては1000億円以上が使われており、財政の負担としては小さくありません。

合理的に考えれば、インフルエンザワクチンに関わる予算を、別の有益な事業に振り分けたほうが、国民の利益は大きくなるはずです。

ただ、日本の場合、構造上、こういったことは不可能でしょう。

 

以上のような理由から、私はインフルエンザワクチンを打っていませんし、クリニックでも取り扱っていません。

 

これからも、みなさんの健康にとって意味があることをやってゆきたいです。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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