Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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魚の選び方:魚を食べる人は認知症になりにくい 

 

魚を食べると頭がよくなる・・・

 

かどうかは疑わしいです。

 

仮にそうであれば、一人当たりの魚の消費量が多い国ほど頭がよいことになります。

日本人は比較的優秀だと思いますが、魚を食べているからかどうかはわかりません。

一人当たり換算だと、アイスランドやポルトガルなどのほうが多く摂っています。

 

しかし、認知症になりにくくなることがわかっています。

 

 

日本人を対象とした研究(JPHC研究)によれば、

 

魚を食べることで、15年後の認知症のリスクが最大61%低下

 

しています。

 

魚に多く含まれる、いわゆるω-3脂肪酸(DHA、EPAなど)でも同様の結果がでています。

主に、ω-3脂肪酸が影響していると考えてよいでしょう。

これらの不飽和脂肪酸は、体内で合成できないため、食事で摂取しなくてはなりません。

特に、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるなどの作用があることがわかってきており、注目されています。

 

とはいえ、それほど大きな効果は期待できず、臨床で使われているEPA製剤(エパデールなど)は、効果がないのではないかという研究も出てきています。

私の感覚としても、ほとんど効果は感じられないので、長らく処方していません。

おそらく、サプリに加工する過程で、脂質が酸化、劣化してしまうのだと思います。

 

魚として摂るのが、科学的にも確実です。

 

どのくらい摂ればよいかというと、1日70-80g

だいたい、一切れが目安になります。

量を摂る必要はありません。

 

 

魚の種類としては、サバ、アジ、イワシなどの青魚、小魚がよいです。

小魚のほうが、食品は、まるごと食べたほうがよいという考え方(一物全体)にも合っています。

安くて入手がしやすいという点も見逃せません。

 

安全面でも利点があります。

水銀や放射性物質などの有害物質は生物濃縮といって、食物連鎖の上に行けば行くほど高濃度になることが知られています。

小魚であれば、食物連鎖の下位に位置しますので、危険な濃度にはなりにくいはずです。

 

いっぽう、マグロなどの大魚の摂取は、週1回以下にしておいた方がよいでしょう。

食物連鎖の段階が上がると、濃度のゼロが1つか2つ増えます。

言葉通り、桁が違います。

イギリスでは、妊婦に食べさせてはいけないものの一つとして、パンフレットに載っていました。

大型の魚は、健康に良いどころか有害と主張する研究者も多いです。

 

 

小魚なら養殖されていないので安心という点もあります。

 

養殖のハマチは危ないといわれています。

養殖はビジネスですので、どうしても効率が優先されます。

 

狭いイケスの中で「密飼い」といわれる大量飼育をされるので病気になりやすい。

→抗生物質などの大量の薬剤が使われている

というのは、間違いなくあるでしょう。

 

短い時間で早く大きくするために、ホルモン剤を大量投与するというのも合理的です。

酪農と同じ構造ですね。

 

もちろん、品質と安全性を重視して頑張っている業者もいると思います。

ただ、安い大型の魚の切り身は、できるだけ食べない方がよさそうです。

 

味も、天然とは別物です。

 

近所に、自然の池の一部を使って、釣り堀に供給する魚を養殖しているところがあります。

ほぼ天然の環境で育つので、信じられないくらいおいしいです。

栄養面でも素晴らしく、食べた後は、明らかに元気になります。

 

とはいえ、天然の鮮魚は簡単には手に入りません。

 

普段は何を食べたらよいのでしょうか?

 

私のおすすめは、「ちりめんじゃこ」です。

 

食物連鎖では、プランクトンの次くらいなので、最下層に近い

骨まで食べることができ、一物全体の原理にかなっている

養殖する意味がないので、そのリスクがない

低カロリー、高たんぱく、低脂質

ビタミン、ミネラルが豊富

 

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ちりめんじゃこ栄養成分(100gあたり)

エネルギー           298kcal

たんぱく質           64.5g

脂質           6.2g

炭水化物              0.3g

ナトリウム           1700mg

カリウム              1200mg

カルシウム           2200mg

マグネシウム       230mg

リン           1500mg

鉄               18.0mg

ビタミンD          18.0ug

ビタミンB1         0.10mg

ビタミンB2         0.10mg

ビタミンB12       41.0mg

 

出典:日本食品標準成分表2020年版

 

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ごはんにかけて食べることで、噛む回数も増やせます。

 

もう少し大きい「煮干し」もよいでしょう。

 

 

天然物!といっても、大魚であれば、生物濃縮のリスクが避けられません。

 

認知症の予防になるから!といって、養殖の大魚を毎日食べていたのでは、別の問題が起きかねません。

 

魚に関しては、高級な種類ほど、健康リスクがあるという、皮肉な現実があります。

ただ、どんなものでも、食べ過ぎなければ問題はありません。

多くの毒物は、肝臓で処理されて排泄されます。

 

普段は小魚を食べ、大型魚は週一回程度までにしておくのがいいかもしれません。

 

魚は日本料理の代名詞である、寿司の材料でもあります。

私の家族も寿司は好きなので、たまには食べています。

 

どれほど健康に気を遣ったところで、人間はいつか死にます。

認知症が予防できるから食べる、有害物質が心配だから食べない

というのは、選ぶ段階までです。

どちらもある意味で正しく、本質的に間違っています。

 

食事の時には思い切り楽しむという割り切りも必要です。

 

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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