Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
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クエン酸は摂るべき?

 

クエン酸は健康に良いかどうかというのもよく質問されます。

健康のために摂取している人も多く、最近はやりの筋トレの際のサプリメントとして使われたりしています。

 

クエン酸で疲れが取れる?

 

クエン酸は柑橘類や梅干しなどに含まれる酸味成分です。

レモンなどにはグラム単位で含まれています。

 

昔から、疲れた時にはすっぱいものがよいと言われています。

 

 

走ったり筋トレしたりする場合、嫌気的解糖経路が主に使われます。

糖を乳酸に分解することで、素早くエネルギーを取り出してくれます。

 

乳酸は疲労感を出します。

 

そして、クエン酸はその疲労物質を減らしてくれます。

 

 

クエン酸回路=TCAサイクルというものがあり、栄養素から効率的にエネルギーを取り出す働きをしています。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%B3%E9%85%B8%E5%9B%9E%E8%B7%AF

 

クエン酸回路の燃料は糖と考えられていますが、最近のマウスの実験では、絶食でもクエン酸回路が回っており、乳酸が主な材料になっている可能性もあります。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7827294/

 

 

ともかく、クエン酸は乳酸脱水素酵素の働きを高め、乳酸の分解を促進してくれます。

 

肉体疲労時にクエン酸を摂るのは合理的でしょう。

 

 

 

クエン酸は酸性なのに体をアルカリ性にするのはなぜ?

 

クエン酸自体は酸性ですが、身体をアルカリ性にしてくれる働きがあるといわれています。

 

クエン酸ナトリウムは水に溶けると緩衝剤として作用します。

H+が減り、HCO3 -が増えます。

 

尿のpHを調べても、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムの場合、アルカリ化します。

クエン酸の場合、それは起こりません。

 

クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムは、クエン酸をアルカリで中和したものです。

クエン酸単独だと、弱酸とはいえ、それなりの酸性物質です。

酸性の物質が血液に入ると、腎臓からH+の排泄が増えます。

クエン酸は消費されて無くなりますが、腎臓の切り替えはゆっくりなので、しばらくは酸を捨てるモードが続きます。

結果として血液はアルカリ性になります。

 

 

それに加えて、乳酸が減るので、血液の酸性度は下がります。

 

乳酸は血液を強力に酸性に傾けます。

臨床では乳酸アシドーシスといって、乳酸が増えすぎて血液が酸性になりすぎる状態もあるくらいです。

 

 

実験でもクエン酸摂取により血液の酸性度が下がることが確認されています。

このへんは、生理学、生化学の知識がないと難しかったかもしれません。

 

ただ、クエン酸は血液をアルカリ性に傾けるのは間違いありません。

 

 

 

クエン酸はどこで使われる?

 

クエン酸回路の酵素は、ミトコンドリア内に存在しています。

 

クエン酸回路は、ミトコンドリアの機能の中心です。

ミトコンドリアの機能は年齢とともに低下します。

子どもが走り回っても疲れないのは、ミトコンドリア機能が高いためです。

エネルギー産生効率が悪くなると、身体の活力自体落ちてきます。

年齢とともに動きが少なくなるのはミトコンドリア機能に大きく関係していると思われます。

運動はミトコンドリア機能を高めることが知られています。

運動で乳酸が増えると、クエン酸回路の材料が増えるので、サイクルが回りやすくなります。

 

 

クエン酸で運動パフォーマンスは上がる?

 

疲労物質を減らしてくれ、ミトコンドリアのエサにもなるので、理論上、運動前に摂ると、パフォーマンスが上がる可能性はあります。

 

過去の研究では、

 

パフォーマンス向上の効果を得るためには最低でも0.3g/kg 体重の摂取が必要

0.5g/kg で数分間の運動量が12%増加

それ以上摂ってもパフォーマンスは上がらず、胃腸障害の頻度が増加

クエン酸ナトリウム摂取後、血液のpHが最大になるのは3-4時間後

 

ということです。

 

60㎏の人なら30gも摂らないといけないので、かなりつらいですね。

かなり水を飲まないと胃腸障害が出そうなので、水の飲みすぎでパフォーマンスが下がるような気がします。

論文でも、摂取が大変な割に、効果としてはそれほどではない、という評価です。

 

トレーニング系のサプリにクエン酸が入っていることが多いようですが、せいぜい数gがいいところでしょう。数十g単位で摂らないと効果がないので、謳っているほどの効き目はないでしょう。

サプリメントの売り文句はこういうのが多いですので、気をつけましょう。

 

いずれにしても、乳酸自体、運動しすぎにブレーキをかける安全装置の役割もしていると思われます。

リミッターを外した運動は怪我のもとなので、摂るにしても、激しい運動をした後の、疲労回復目的がよいでしょう。

 

 

クエン酸は、ミネラルの吸収を良くするなどの効果もあり、悪いものではありません。

しかし、運動量が少ない人にはあまり意味がないかもしれません。

 

害はなさそうなので、運動量が多い人は試してよいと思います。

 

 

 

私は、長距離自転車通勤のあとは尿の乳酸臭がすごいので、クエン酸の粉末を買ってみました。

思ったより酸度が強いものの、ビタミンCのような苦みは無く、純粋な酸味です。

とはいえ、さすがに何十gも飲むのはきつすぎる・・・。

 

最近は慣れてしまって、疲れや筋肉痛は感じないのですが、クエン酸を飲むとなんとなく体が軽い気はします。プラセボかもしれませんが。

ある程度、続けてみないとわかりませんね。

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この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
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