Oxfordで、GLP-1を研究していた糖尿病専門医が、肥満治療を考えます。
https://shigeto-cl.com/

【肥満の原因】怖い果糖ぶどう糖液糖  

多くの清涼飲料水に含まれる果糖ぶどう糖液糖。

これは安全なのでしょうか?

 

果糖ぶどう糖液糖は、異性化糖の一種です。

トウモロコシなどのでんぷんを酵素処理して作られる甘味料です。

材料としては天然のもので、それを酵素で分解しただけです。

分類としても天然甘味料になり、それほど悪いもののようには思わないかもしれません。

 

安く大量に生産できる点も大きいです。

栽培のための気候条件が厳しいサトウキビと比べ、トウモロコシは大量に安く生産できます。1970年代以降、爆発的に世界に広がりました。

清涼飲料水だけではなく、シリアルやジャム、ケチャップなど、多くの食品にも添加されています。

加工食品には、だいたい入っていると考えて間違いないでしょう。

 

すっかり身近な存在の果糖ぶどう糖液糖ですが、いろいろ問題があります。

ここでは健康に対する問題を見てゆきましょう。

 

 

まず、果糖ぶどう糖液糖の定義です。

糖類の中の、異性化糖(高フルクトース・コーンシロップ)に分類されます。

ぶどう糖果糖液糖というものもあり、これは、含まれる果糖の割合の違いです。

 

ぶどう糖果糖液糖は糖のうちの果糖の割合が 50%未満

果糖ぶどう糖液糖は果糖の割合が50%以上90%未満

 

ということです。

ちなみに、果糖が90%以上含まれていれば、「果糖」の表記になります。

 

日本では果糖55%の果糖ぶどう糖液糖が使われているので、果糖ぶどう糖液糖=異性化糖として話を進めます。

 

 

結論から言いますと、果糖ぶどう糖液糖は安全ではありません。

 

砂糖と比べても、有意に体重を増やします。

 

動物実験では、同じ量のグラニュー糖を摂取したマウスと比べ、果糖ぶどう糖液糖を摂取したマウスの方が体重の増加が大きくなりました。

 

砂糖と果糖は代謝が異なっています。

食欲は血糖(グルコース)が上がると抑制されますが、果糖では抑制されません

 

ぶどう糖は小腸から吸収された後、血液中に入り、全身の細胞に運ばれます。

解糖系で分解され、エネルギーとして利用されます。

余ると中性脂肪に変換され、貯蓄されます。

 

果糖はグルコースと違い、直接的なエネルギーではないため、食欲中枢の抑制にならないようです。

 

あまり知られていませんが、グルコースはGLP-1分泌刺激物質です。

(ケンブリッジ大学で研究されており、このあたりは研究者の顔まで知っています)

血液中のグルコース濃度が上がると、インスリン、GLP-1が分泌されます。

いずれも強力な食欲抑制物質ですので、食欲は抑えられます。

 

しかし、果糖はその効果が弱く、インスリン、GLP-1を増やしません。

理論上も食べ過ぎになりやすくなります。

 

果糖は果物などで適量摂る分には問題ありませんが、清涼飲料水で摂るのは問題です。

満腹感が得られないのでブレーキが効かず、精製糖として大量に摂ることになります。

 

 

果糖はグルコースと比べて反応性が高いという点も問題です。

身体に入った糖の一部は、細胞のたんぱく質や脂質と結合します。

これを糖化といいます。

過去1~2か月の血糖を予想できるヘモグロビンA1cは、この糖化を見ています。

糖化は細胞の老化とも関係しており、できるだけ減らしたい現象です。

グルコースと比べ、果糖の反応性は10倍ほどですので、精製されたものを大量に摂れば、急速に老化が進みます。

果物から摂る分には、ポリフェノールなどの影響があるので、それほど気にしなくてよいでしょう。

 

 

いうまでもありませんが、病気になりやすくなることもわかっています。

 

多くの研究で、清涼飲料水を多く摂取する人たちは、内臓脂肪が多く、糖尿病になりやすく、心筋梗塞のリスクが高いことがわかっています。

 

その結果、先進国では、果糖ぶどう糖液糖などの異性化糖の使用禁止活動が広がっています。

アメリカでは、学校給食からファーストフードや清涼飲料水を排除する動きが出ています。

 

たばこは、明らかに健康に有害であることを理由に、たばこ税という税金がかかっています。

不健康な行為をするのは自由ですが、その結果、将来の医療費は多くなります。

健康的な生活を心掛けている人は、将来、それほど医療費を使わない可能性が高いです。

同じように税金を払っているのだから、これは不公平だ。

だから、たばこを買う人からあらかじめ税金を取っておき、医療費に回そう。

という考え方です。

 

「果糖ぶどう糖液糖も健康に有害であるため、砂糖税は妥当である」

として、イギリスなどは、砂糖税を導入しました。

合理的ですね。

 

日本ではなぜ、議論も起こらないのでしょうか?

食品の成分表を見ればわかるとおり、日本の加工食品のほとんどに果糖ぶどう糖液糖が入っています。

議論のためには、果糖ぶどう糖液糖が健康に有害であることを国民が知っている必要があります。

しかし、テレビをはじめとしたメディアが、このことについて触れることはありません。

スポンサー企業の多くが加工食品会社だからです。

多くの商品が、健康に有害な成分を使っているという情報を流せば、当然売れなくなります。

放送できるはずがありません。

構造上の問題で、改善されるとしても、途方もなく時間がかかるはずです。

 

同じ理由でトランス脂肪酸も規制されておらず、野放しです。

 

 

私は、自分では果糖ぶどう糖液糖が入っている商品を一切買いません。

こういう人が多ければ、果糖ぶどう糖液糖などが入っている商品が売れなくなり、やがてなくなるはずです。

 

現状、消費者が賢くなるしかありません。

 

にほんブログ村 ダイエットブログ 健康ダイエットへ
にほんブログ村

 

 

 

この記事を書いた人
しげとう・まこと●医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。2021年から洛和会音羽病院糖尿病内科部長代理、医療法人シゲトウクリニック理事長を兼務。
SNSでフォローする
https://shigeto-cl.com/